TUGUMI/吉本ばなな

TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)

TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)

吉本ばなな氏の小説はコレと『キッチン』しか読んだことないんですけど、心理描写が風景描写とあいまって、とても美しい文章になっていると思うのです。とりあえず、コレを読んでて心に残った一節。

都会では人はいったい何に向かって「平衡」をおもうのだろう。やはりお月様だろうか。しかし月は海に比べたらあまりにも遠くて小さくて、なんだか心細く思えた。

私も海育ちの田舎育ちなので、この気持ちはすごくよくわかる。海はとてつもなく広い。それもただ広いだけでなく、何も言わなくても何かを教えてくれる。何かを与えてくれる。
田舎で見る月は儚くて力強くて、だだっぴろい天と地をくまなく照らし出し、神秘的で吸い込まれそうになる。でも東京で見る月は狭い空しか与えられず、ネオンの光に負けて、なんだか悲しげに見える。儚いのではく、弱弱しいのだ。
海や広い大地が恋しくなったら、コレを読みます。